Mission Day at Sea X-faction Memories 05 Day Five Cozumel

CrystaTechCrystaTech ✭✭✭
編集済: 12月 2019 SITREP

お散歩AGの @CrystaTech です。

2019 11/3~11/9開催の、海のミッションデイ『Mission Day at Sea』SITREP、『Mission Day at Sea - DAY4 コスタ・マヤ - https://community.ingress.com/jp/discussion/7623/mission-day-at-sea-x-faction-memories-04-day-four-costa-maya 』からの続きです。


Mission Day at Sea - DAY5 コスメル -

コスメルはカリブ海に浮かぶメキシコ領の小さな島である。

我々の申し込んだツアーは午前中の少し遅い時間帯にピックアップが来るので、早めに船を出て港周りのミッションを済ませてしまおうと言う話になった。ウニクマコンビは早起きして3階で朝食を食べて、5階のカフェで優雅にコーヒーを飲んでいた。ぎりぎりまで寝ていた私は、5階で彼らと合流し、眠い頭のままエッグロールとコーヒーをもさもさ食っていた。ウニがカップに入ったパインを取って来て皆で摘む。甘くて美味い。他にも色々なカットフルーツやデザートがある。これを食べ放題とか、もっと早く知っていればなぁ。

ツアー先でのおやつ用に、パストリーも少し頂いて行く。


遺跡探検ツアーで歩くと言うのに、流石にサンダルではまずいと思い、ちょっと痛いけど自前の靴を履いてピロリロッ♪と下船した。クマも足トラブルを抱えていたが、今日は薄皮が張って随分と良くなったと言っていた。良かった。昨日はフィン擦れがとても痛々しく、どうなるかと思った。みんなで下の医務室に行ってみたぐらいだ。医務室の手前に自動販売機があって、殺菌剤入りの絆創膏や痛み止めなどが置いてあったけど、このキャッシュレスの徹底した船で何故かコイン式。持ち歩いてないよ。『相談して来ようか?何なら明朗会計かどうかきっちり確認して来るから』とクマに言ったがクマは大丈夫だ、と言った。お金については確認しておかないと。アメリカの船だから、バンドエイドと包帯くるくる巻いて『ハイ、$150です』なんて言われたらたまったもんじゃない。


コスメルでは港から街に入る時に桟橋でセキュリティゲートを通る。船のパスを提示し、ワンワンチェックを受ける。黒い犬が座っていて、その犬に荷物の匂いを嗅がせるようセキュリティのお姉さんに指示された。食べ物の持ち込み、持ち出しに制限があるらしい。検疫みたいなものだろうか?3人ともワンワンチェック合格だった。


今日は生憎の曇り空。

...と思ったらミッションしてたら晴れて暑くなってきた。

セブンイレブン発見!


グランドケイマン、コスタマヤとサブミッションは良かったのに、ここに来てまた往復ぐるぐるミッションである。

港付近と噴水のある公園を何度か往復させられた。港付近でセキュリティチェックがあって船内IDを提示させられる。何回か往復するうちに顔パスになってしまった。セキュリティのお姉さんも、何で今日はスマホ持った人々が何度も同じ道を繰り返し歩いているのかしら...と不思議に思った事だろう。


『おいクマ!何か産み付けられてるぞ!』

ウニがクマの肩を指差して言った。『えぇぇ~、何それ?』

『何か卵みたいなのがある。』

『何だろう?虫かな?うわ気持ち悪。何か孵るぞきっと。』

クマを茶化していると、クマは『鳥のフンかもしれない』と言った。先ほど何かが落ちて来たような感覚がしたらしい。確かに何かの木の実を食べた鳥が未消化の種をフンとして落としたように見える。『まぁ、"ウン"がついて良かったじゃない。』ウニが『キモー!!』と言いながらティッシュでクマの肩を拭った。


無事ミッションを終わらせたが、足がヤバい事になっていた。

治りかけの小指もそうなんだが、右足の裏がすごく痛い。何か異物でも入っているのだろうか?そう思って靴を脱いで中に手を入れると、靴底の真ん中ぐらいに穴があいて、ささくれ立ってガサガサしていた。履き慣れている靴だが、ずっと歩き回っているうちに負担がかかって知らないうちにそうなってしまったのだろう。その旨を2人に伝えて、すぐ近くにあった薬局で包帯やテープを買った。これで負傷している小指も含め足をぐるぐる巻きにしてしまえば、靴底のささくれも気にならなくなる...はず。

通りがかったAGにめっちゃ心配された。

足をぐるぐる巻きにしていたら、ウニが『あ!ハチドリだ!』と言った。ほんの一瞬だけ姿を拝む事が出来た。緑色。羽ばたく速度が速すぎて、本当に蜂みたいな『ブーン』という音を立てて飛ぶんだよね。

ぐるぐる巻きにして靴を履いてみたけど、やっぱダメだ。体重の前には薄い包帯は無力だった。相変わらずささくれのところが当たって痛いし、おまけにただでさえ余裕がない爪先にも包帯を巻いたので、締め付けられて辛い。『ヤバい...痛いこれかなり痛いわ...』私がそう言うと、ウニは真剣そうな顔をした。


『...僕の靴を履いた方が良いんじゃないかな?』

『えー!いやいやいやいや、そしたらウニさんサンダルで遺跡歩く事になるじゃないですか!ダメですそんなの!』

『いや、そんな事言って途中で動けなくなったら目も当てられない。』

『気力で何とかします!割と根性ある方なので!(←マジで言ってる)』

『いいから、これ履いて。』

ウニは靴を脱いで差し出した。

『...すごくでかくないですか?』

『紐を縛ればサイズは大丈夫。立ってみて。痛い?』

...重いけど、痛くない。


『じゃあ、船に戻って僕のサンダルを取りに行こう』

私は恐縮しぱなっしだった。

ウニのサンダルはスポーツサンダルなるもので、割とラフな道でも歩けるものらしいけど、それでも申し訳ない。靴の事では本当にお世話になってばかりである。今、ここで改めてお礼を言わせてください。ウニさんありがとうございました。


まだツアーまで少し時間があったので、ウニシューズを履いて復活した私は2人と再び船の外に出て、ゲートで再びワンワンチェックを受けて港周りを散策した。

食べられてしまう生き物が嬉しそうにしている絵、と言うセンスは一部の国の人には異様に映るらしいが、この国ではそうではないようだ。日本でも普通だよね。笑顔でトンカツを作っている豚さんのイラストとか。

エビ料理かー。そそるなー。食べたい。


ここも海は綺麗だ。

お魚がたくさんいたので、貰ってきたパストリーをちょっとお裾分けしたら食い付く食いつく。

これは是非水着に着替えて飛び込んで遊びたいところなんだけど、そこまでの時間は無い。

ツアーの時間になったので、お土産屋やレストランが集まる街の中心部の集合場所へ移動。受付の行列に並び、チケットを見せる。AGが多い。待ちの客を退屈させない為だろうか、楽器を持った派手な2人組が来てドンドコドンドン始めた。民族楽器が欲しいんだけど、どこに売ってるのかなぁ。お土産屋さんに入る度に探していたけど、ちっとも見つからん。

ツアーガイドのランディがLandyとペンで手書きで書かれたステッカーを参加者に渡す。『これはメキシコのGPSよ。私のツアーの人達だって分かるから常に胸に付けていてね!』元気で明るいお姉さんである。皆でバスにゾロゾロと乗り込む。スタッフの紹介などが行われる。『これはペドロ。1つだけ注意があるわ。ペドロにテキーラを与えない事。』

目的地の遺跡までは結構距離があるようだ。バスの中のAG達はスキャナを開いて道路の途中にあるポータルを狙っていた。10人ぐらいは乗っていたのだろうか。他のAGを乗せたツアーが通った後なのか、ほぼ全てのポータルが緑色なのだが、誰も焼く気配が無い。もしかして、RES私1人だけ...?何だか皆が私が焼くのを待っている気配がする。デプロイボタンに指をかけて連打してる悪寒がする。案の定、焼いて挿そうとした瞬間に7本ぐらい緑色のレゾが挿さるので、イヤになってしまって途中で諦めた。弾が無くなっちまう。

ランディが言う。『遺跡の手前にはお土産屋さんがあるわ。本当のローカルのお土産屋さんよ。地元のアーティスト、職人が商品を作っていて、売り上げが100%地元に入るの。港のお土産屋さんの売り上げの多くは、船会社に取られてしまうの..お願いですから、お買い物をしてください。お願いします。』


...闇だ。

確かに、毎日知らんうちに船室に置かれている『本日の見どころ・案内』みたいなパンフレットに、港周りの土産屋の名前と案内が載っている。恐らく船舶会社と何かしらの契約を結んでいて、売り上げから結構な額が引かれるから港側ではビーチ側のように値切れないのだろう。


ランディが続ける。『お土産屋さんには特産品の黒珊瑚のジュエリーがあるわ。昔から魔除けの効果があるとして珍重されてきた美しいジュエリーなの。港でも買えるけど、こっちで買った方がずっと安いわ。そして、このメキシコのGPSを提示すればなんと25%OFF!』『ヘェ~』と声が上がる。私もちょっと興味がある。『遺跡のツアーが終わったら、お買い物をする時間が15分ありますからね!』ん?今何て言った?15分?...多分聞き間違い。


車の中で音声受信器が配られる。『私の声が聞こえるー?』ランディーが言う。なるほどこれなら多少離れてもツアー案内が聞こえる。

暫くしてコスメルのマヤ遺跡の1つ、San Gervasioに到着した。遺跡の中には寺院跡やトウモロコシを磨り潰すのに使った石器、祭壇などがあり、ランディが1つ1つをマヤ文明の話と共に解説しながら回った。

ここでの話は本当に面白くて、神秘的で、聞き入ってしまったが、書いているとただでさえ長いSITREPが更に長くなってしまうので自分が特に面白いなと思った箇所のみ掻い摘んで書いてみる。


ここSan Gervasioは妊娠出産や豊穣、医学を司る女神、Ix Chel(イクシェルと聞こえた)信仰の地であり、マヤの女性達にとっては聖地だった。島だが交易が発達しており、その証拠にコスメルには無いトルコ石などが出土している。人々の主食はトウモロコシであり、トウモロコシを効率的に育てる為に豆とカボチャを一緒に植える農法を取っていた。3種類の野菜がそれぞれに作用し(豆が窒素を供給するなど)生産効率を上げる事が出来た。また、作物を植える時期を知る為に、民は月の動きをつぶさに観察していた。月の引力により潮の満ち引きが発生し、それは海面の高さの変化だけに止まらず木々や生物の内部の水分でも起こっていると考え、それを元に日常の様々な事を決定した。神に生贄を捧げるなどの祭祀も月のサイクルを元に決められ、人々が一番"Lunatic"になる日にそれは執り行なわれた。

人々がこの島を選んだ理由、それは、島と言う『胎児』が海と言う『羊水』に守られているからである。

マヤ文明と言えば人間を生贄にしていた事で有名だが、San Gervasioではその証拠はまだ発見されていないそうな。

イグアナがたくさんいるわよ、と着く前に言われたけど、思ったよりはそんなにいなかった。

しかしコイツは威厳があるなぁ。

遺跡の中は白い石と緑のコントラストが綺麗だけど、兎に角、蚊が多くて参った。


遺跡の中の寺院には1000年以上前(もっと昔と言っていたような...)の手形や青の絵の具が残っている。

ところで、喜べ我が同胞レジスタンスの者達よ、マヤの民にとって、マヤブルーと名付けられた青は王の色、聖なる色であったそうだ。

(...生贄の身体も青く塗られたらしいが。)


マヤ文明とその人々に思いを馳せた後は、遺跡の入り口でショッピングタイムである。

『15分ほど時間を取ります。すぐにバスに乗りますよ』

...マジで15分だった。


黒珊瑚!マジで黒い。ネックレスは多分高くて手が出ないな。チャームとかはそんなに高くなさそうだからお土産に良いかもしれない。えーと、どれが良いかな?遺跡の地図と資料、ちょっと欲しいな。デザインも悪くない。Ix Chelのタペストリ、なかなか魅力的だ。だけど他に信仰している神様がいるから浮気するのもなぁ。と言うかペソか。ドルに変換するとおいくら万円だ?えー、迷うな~。

ランディ『皆さんバスに乗ってください~』

おいおいおい、マジかー。それでも結構買っている人がいた。ウニクマコンビはショッピングにはさほど興味が無いらしく、軽く見て回った後はメキシコのビールを買って酒盛りをしていたようだ。


次の目的地は『Mayan Cacao Company』

チョコレート博物館みたいなものである。


バスはビーチ沿いの道路に入った。島の端っこで、アンテナの一本も立たない。

ランディが少し恍惚とした声で言う。『自然...ここは美しい自然だけ。インターネットも無い。海と木々...。青と緑だけ...』

『青と緑だけ...』隣のウニが繰り返した。やっぱそこ引っかかったか。

ランディには悪いけど、多分他のAG達も引っかかって内心『うぷぷ』ってなってる。

カリブ海は塩分濃度が高くプランクトンが少ないので、太陽光が海の深くまで透過し、そのため青色が濃い。そうランディは言っていた。海から上がった時にやたらベタベタすると感じたのは気のせいではなかったのだろうか?


Mayan Cacao Companyまでは少々距離があるらしく、途中にあるビーチに寄ると言う。ランディが説明する。

『これから行くビーチにトイレがあるから必要な人は済ませておいてね。だけどビーチのトイレだからあまり綺麗とは言えないわ。ビーチには珊瑚が岩になって出来た高台があって、そこから海が見えて綺麗だけど、鋭いから登るなら本当に気をつけてね。海水に足をつけてリラックスするのもいいわね。そうそう、新鮮なココナッツジュースも売っているのよ。椰子の実をその場で鉈で割って中のジュースを飲ませてくれるの。とても美味しいわ。飲み終わったら中の果肉も食べられるのよ。カクテルバーもあるからカクテルを飲むのも良いわね。『ココ・ロコ』ってカクテルは椰子の実のジュースとラムとテキーラとウォッカを混ぜたものよ。トライしてみるのも手ね。強いけど。そしてここにもお土産が売っているわ。楽しんでね!時間は15分よ。』


いやいやいや冗談でしょ。

そんなに色々言って15分しか無いんかい!


取り敢えずは珊瑚の高台に登ってみる。

波が結構荒い。ウニクマコンビは一番上まで行って海を覗き込んだようだ。

下に降りるとウニと一緒にほんの少しだけ浜辺でビーチコーミングをした。指の先ぐらいの小さな珊瑚の欠片やら砕けた貝殻で浜が埋め尽くされている。案外、思い出用のお土産ってこんなのでもいいのかもしれない。お持ち帰りNGな所もあるけど。『ココ・ロコは飲まないでいいんですか?ハードリキュール3種ちゃんぽんってすごいよね。』そう言うと、ウニは肩をすくめた。

クマはお土産エリアを彷徨っていた。黒珊瑚のジュエリーや置物、売り物かは分からないが立派な珊瑚や乾燥した海藻などが置かれている。買いたいけど、選ぶ時間が無さすぎる。優柔不断な自分には無理ゲーだ。焼き菓子らしきものもあったりして、色々興味深かったのだけど、結局我々は何も買わずに終わった。1時間ぐらいは欲しかった。買ってた人も結構いたから、多分、迷う時間を与えないと言うのも戦法なんだろう。

再びバスに乗って、暫く揺られ、最後の目的地であるMayan Cacao Companyへ。

ボディペイントをしたマヤ人の男性がマヤ語で何かしら唱えながら煙を焚いて儀式?をして出迎えてくれる。

チョコレートの原料となるカカオを初めて栽培し始めたのはマヤ文明と言われている。カカオは『神の食べ物』として珍重され、偉い人は高貴なカカオ飲料を飲んでいたそうな。しかしマヤ人のカカオ飲料は砂糖も何も入っていない苦いばかりの代物。16世紀にやってきたスペイン人は全くもって気に入らなかったらしい。何故そんなゲロマズだと思ったものを持って帰ろうかと思ったのかよくわからないが、通貨になるほど珍重されていたものなので、取り敢えず持ち帰ってみたのだろうか。カカオ豆を持ち帰ったヨーロッパ人は、それに砂糖やミルク、スパイス類を加えて美味しいものに加工した。それがチョコレートである。

カカオとチョコレートについての薀蓄を聞いた次は、小さな小屋に入った。その中には大きな祭壇があった。一目見て、それは死者を迎えるものだと直感した。何段かに分かれ、写真が置かれ、花がたくさん飾ってあり食べ物が山ほど供えられている。見事だったけど、ウニもクマも私も写真を撮らなかったのは、日本人の感覚によるものだと思う。それはメキシコの11/2の『死者の日』の祭壇で、死んだ人の魂が戻ってくるので食べ物を供えて家族でお祝いをする。日本のお盆に近いなと思った。後で調べた所、死者の日はお盆よりもずっと明るい感じのお祭りであるらしい。


説明を終えたランディが言う。『サプライズがあるのよ。ここを出たところで、地元の人が、本物のトルティーヤを用意してくれているの。』

なるほど、一度団子にして焼くのか。腹が減っていたのでちょっと嬉しい。ソースにはチョコレートが入っているようで甘い。トウモロコシの挽き方が荒いのか生地は少しボソボソとしていて、アメリカで食べるそれとは全く違っている。風味も全く別物だ。近くに『辛いものが好きな人はちょっとソースに垂らして食べてみてね』と言われていたソースが置いてあったので3人で手の甲に垂らして味見してみた。ハバネロ入り...悶絶したのは私だけだった。割と辛いもの好きなはずなのに。きっとウニとクマにはハバネロが入ってない部分が当たったに違いない。そうに違いない。暫く手の甲がヒリヒリ痛くて、ヒーヒー言っていたらランディが『今から甘いものを食べられるから、ほら!』と次の建物のドアを両腕で指した。ドアの前で、茶色のペーストの乗った木のアイスクリームのスプーンのようなものを配っていて、それを貰って入場する。

貰ったのは勿論チョコレートで、それをペロペロしながらショーを観るのである。

チョコレートと言っても滑らかではなく、キメが粗くてカリカリしたものが入っており、シナモンの香りがする。美味しいけど不思議な味だ。

今からこれを作るデモンストレーションをするようだ。


ノリの良い兄貴が、カカオ豆をザラザラと石のすり鉢に落とす。

『今からこれを磨り潰して行くから、スペイン語で10数えてくれ!』

アメリカの人は割と授業でスペイン語を取っていたりして、10数えるぐらいは出来る人が多い。皆でウノ、ドス、トレス...と数え始める。

それに合わせてゴリゴリと豆が潰されていく。兄貴はそこに次々と蜂蜜、オールスパイス、シナモン、バニラ、砂糖などを加える。砂糖はほんの少しだ。

『混ぜていくぞ、次は20まで数えてくれ!出来るかな!?』

ウノ!ドス!トレス!

元気に始まるが、10を過ぎると途端に声が少なくなって行く。

『おい君達、途中から怪しかったぞ!さて、出来た。これがさっき君達が味見したチョコレートだ。』

デモンストレーションが終わるとランディが出てくる。

『外にバーがあって、チョコレートを使った珍しいカクテルが色々あるわ。チョコレートモヒートなんてどうかしら!お土産屋さんでチョコを売っていて、試食も出来るんだけど唐辛子入りのチョコがあるからそれだけは注意してね!20分から30分ぐらいあるわ!』

...今回は少し長い。

カクテルを飲んでリフレッシュして、お買い物を楽しむにはちょっと心許ないけど。

と言うかチョコレートモヒートって、そのまんまチョコミント...


外に出るとカカオ飲料の小さな壺がたくさん置いてある。水でカカオを溶かしただけのものだ。

『マヤのエナジードリンクだぜ!』と兄貴が言う。

マヤの高貴なゲロマズエナジードリンク、行ってみようかー!

我々は『せーの』でそれを一気飲みした。『いや思ったより悪くなかったな...』『甘くないココア』そう言いつつちょっと通路を歩くと、両側に砂糖やスパイスの壺が置いてあった。

これで味付けして飲むべきだったのだろうか。アホなので話を聞いてなかった。『やっちまったなぁHAHAHAHA』

『もう1つ取ってくる』

ウニが素早く残っていたものを取ってきて、3人でそれを分けた。

色々入れてみたけど、ふーん、ってな感じで。それより伝説のマヤ強壮剤をショット出来たのが楽しかったな。


バーのメニューを見ながら『チョコミント行っとく?』と話をしていたら、誰かが『あっ!』と言った。振り向くと、先ほどの砂糖やスパイスの壺に小さな鳥が群がって砂糖を食っている。開けっ放しにするから...。でも、か、可愛い...。

お土産屋さんはなかなか良いものが揃っていて、チョコがたくさん売っていたので片っ端から試食しまくった。美味しかったので買おうかと思ったけど、歩き回っているうちに溶けそうな陽気の日なので買わなかった。他にも色々と目を引くものはあって、どうしよっかな~でもレジ混んでんな~と思っていたら時間になってしまった。クマは結局チョコミントなカクテル(チョコレートモヒート)を頼んだらしい。チラッと見たけど、確かにモヒート。でもモヒートにチョコチップが浮いてるだけだった...。


港のショッピングモール近くでバスを降ろされる。

『船の時間は何時だったかな~!?16時半よね!』ランディが言う。

『このメキシコのGPSはマルガリータ・ヴィレに持っていけば1杯無料でドリンクが飲めるから!タコスが美味しくておすすめよ!黄色い建物よ!』

バスを降りる時、みんなチップを渡していた。中には10ドル札を渡してる人もいた。まさかこのタイミングだとは思わなくて、渡しそびれてしまった。スタッフの皆さんの感じがすごく良かったから是非ともチップを渡したかった...。マヤ遺跡もチョコ博物館も勉強になって楽しかったなぁ。特にカカオ豆をゴリゴリして蜂蜜とスパイスを加えて練れば簡単にチョコが出来るのが分かったのは収穫だ。カカオ豆なら日本でも手に入る。


泣いても笑っても、ここコスメルが最後の寄港地であり、MDAS終焉の地である。我々は島との別れを惜しんだ。

最後の最後まで、港の周りで出来る事をしようと思った。


ツアーで全くお土産を買えなかったのでお土産屋を回る。

とりわけ我々の目を引いた土産物はこれだった。

『置物...?』

『大人のオモチャ...?』

『何で先っちょに穴空いてんだ?』

『今回はどう見ても笛じゃないよ。他に穴開いてないもん。』

『店員さーん』


イケメン店員の元に、ストーンチ●コを持って行って説明を求める。何で先っぽに穴が空いているのかと。これは一体何に使うチ●コなのかと。

『これはペンシルスタンドだよ!』


えー...?

鉛筆立て?1本だけ鉛筆立てるの??意味わかんねー。

でも観光客ってこう言うのノリで買う事あるんだよなぁ。


マルガリータ・ヴィレが気になっていたので、腹も減っていたし行ってみる。

メキシコのGPSと引き換えに無料でマルガリータを一杯もらう。氷がヤバい、ってローリーが言っていたけど、軟弱腹の観光客だらけの港だから大丈夫だろう。

と思いつつ、氷が溶ける前に一気に飲み切るチキンハートの自分。


『もう夕方だし、あまり食うと夕飯に響くからスナック程度にちょっと食べようぜ。』

3つ入りのビーフタコスセットと、ビールを頼む。向かいに座ってのんびりしているAGに手を振る。もう少しで16時か。船16時半って言ってたっけ?まぁ、あのAG余裕ぶっこいてるし、まだ時間あるだろ。

うほっ、うまそう。何かここにきて、メキシコでもっとグルメしてこなかった事を後悔した。そりゃ食中毒怖いけどさ、港周りだったら平気だったんじゃ?

『船の時間、何時だっけ?』クマが聞く。『17時』ウニが答えた。ん?...まぁいいや。ウニの方が私より全然しっかりしてるし、普通に考えて16時半は搭乗開始って意味なのだろう。

ほんの少しずつ陽が落ちてきていた。夕食前のスナックとビールを楽しんでご機嫌になった我々は、もう少し散策を続ける事にした。これが旅の終わり。後は帰るのみ。その想いが我々の脚を船の方角に向かわせなかったのもあるだろう。私がレジにお土産を持って行っている間、ウニとクマは別の店で地元のビールを買ったようだ。まだ飲むんかい。


周囲に人の影がほぼ無くなり、お土産店が店じまいを始める。まだ我々がいるのになぁ、と思った。

『そうだ、最後にあの魚達に挨拶してから帰ろう!』ウニが言った。そうだ、まだ少しおやつのパストリーが残っていたんだ。先ほどの魚の溜まり場に行く。パストリーを千切って海に投げると寄ってきてバシャバシャと寄ってきて食いつく。『可愛いなぁ。』

スマホを見ると16:25だ。流石にそろそろ船に向かった方が良いだろう。『急げ急げ!』残りを一気に放り込むと、魚達が狂ったように跳ねた。

『あ、ビール買ったんだった。』ビールは船には持ち込めない。ウニとクマはエビ料理レストランの後ろに回り『コスメル』の看板の文字の端を使って栓を開け、イッキし始めた。

ゲートに向かうと、セキュリティのお姉さんに止められた。

『ここから先は持ち込み禁止です。そこで飲んでください!急いでください!』

お姉さん、やけに真剣な顔である。ウニがその場で一気に飲み干して、私と先にゲートを出た。『やーい、クマ、さっさと飲めー!』『クマー!』ゲートの向こう側に向かって叫ぶ。数十秒後、口を拭いながらクマが出てきた。桟橋は結構長く、船まで5分と言ったところか。夕焼けの写真などを撮りながら歩いていた。我々以外には桟橋の上を歩いている人は殆どいなかった。実は何となく、お土産屋さんが店じまいを始めた辺りから変な感じはしていたのだけど...


『ママ、船が行っちゃうよ!』

のんびり歩いている我々の横を、子供が駆けていく。その後に続く母親も急ぎ足だ。...ん?

『私らも走ってみるか!』『オゥ。』

素でジョークのつもりだった。

3人で走り出すと、船の上から一斉に大勢の歓声が上がった。

『頑張れーー!!頑張れーー!!走れ走れーーー!!!』


えっ、何これ、何でみんなに応援されちゃってんの?

何で小学校のマラソン大会でビリっけつの子がゴールする時みたいになっちゃってんの?

『走ってまーす!頑張ってまーす!!』

手を振りながら声援に応える。我々は全く状況を読めていなかった。

『まだ後ろに家族連れとかいたよな?ウチらが最後じゃないはずだ。船に乗ったら、ウチらも上で歓声上げてる奴らに加わろうぜ!』

『おう!やろうやろう!!』


2つあるタラップの1つが仕舞われているのは昨日と同じだ。

しかし、もう1つにも網をかけ始めている。おいおい、まだ帰ってきている途中の客がいるのに、ひどいなぁ。我々が乗り込むと、続いて家族連れも乗り込んだ。ピロリロッ♪とセキュリティを通る。『急げ急げ、デッキは4階だ!』


先ほど人々が歓声を送っていた4階デッキにダッシュして、コスメルの港を見つめている人々に混ざって下を覗き込む。ん?誰もいない?まさか我々が最後?『あーあ、ウチらもビリの奴ら応援してやろうかと思ったのになぁ』と言ったら、何か周りの空気がおかしい。

あれ?何かマズったかな?よくわからんけど気まずいのでデッキを出る。


『取り敢えず、走って疲れたから何か飲もう』ウニが言う。

5階のバーのテーブル席に荷物を置き、腰を下ろす。『いやー、楽しかったねー。』

メニューを物色する。

『グリーンテキーラショットにしようぜ』

『何だよ、ブルーテキーラショットは無いのか?...まぁいいや、緑でも青でも。メキシコに乾杯しよう。』


『あれ、船動いてんな?』クマが言った。

『ホントだ、まだ16:44なのに。』ウニがスマホで時間を確認しながら言う。

『日本と違って、こっちは客が全員乗ったら出港時間よりも早く出ちゃうもんなのかね?』

予定の17時より前に船が動き出した事にちょっと驚いていたら、テキーラショットが出された。

『これは、緑とも青とも言えない微妙な色だね。』

『クロスファクションに乾杯』

我々はテキーラを乾いた喉に一気に流し込んだ。


荷物を降ろす為に一旦解散して、それぞれの部屋に行く。

私は着替えを済ませてTGをチェックしていた。

少し前のログを辿っていた指が止まった。


"桟橋走ってる奴らがいる!AGじゃないか!大恥だ!"

"みんな船に乗ったの!?”

”大丈夫、まだタラップは全部上げられてない"

"よし、あいつら、乗れたみたいだぞ!"


うわ、これって...。


ウニクマルームに行く。

『おい...やっちまったみたいだぜ。』

2人もTGをチェックしていたようだ。

『...っぽいね。』


16:30は搭乗開始時間ではなく、搭乗終了時間だったのである。つまり、我々3人は、船に乗り遅れた。

色々なパズルのピースがピシピシとハマって行く。


その後すぐに我々3人が桟橋ダッシュしている動画がTGにアップされた。上で歓声を送っていた中にAGが混じっていて動画を撮っていたらしい。

恥ずかしくて何もコメントできねぇ...


暫く絶句していると、リリーと言う子がタイタニックしたいので写真を撮ってほしいと言うメッセージをTGに投げた。

リリーは良い友達だ。『手伝ってあげようか』3人で船首に出た。船首は嵐のように海風が吹き荒れている。スマホやIDが吹き飛ばされたら大変なので紐をしっかり首にかける。リリーは紫色のロングドレス姿で来ていた。男女2人の有名なシーンではなく、別のシーンをやりたいらしい。風が吹く度にドレスの裾が大きく膨れ上がる。一度は胸まで捲れ上がり、私はリリーの下着を直視してしまった。

リリーを見ていて、折角なので私もタイタニックをやりたくなった。クマとウニを巻き込んで。

良い絵が撮れたので、TGに投下した。この3人、あれだけやらかして、反省の色、全く無し!!

嘘です。実はとても反省していました。


この後も暫く我々は桟橋ダッシュネタでいじられた。当然である。



20時。お楽しみの夕食である。

この日はメイン料理の選択肢にロブスターがあり、テーブルメンバーの目の色が変わった。ロブスターはアメリカでも大御馳走なのである。

オーダーを取りに来たウエイターのお姉さんがそんな皆を見て、ちょっと困りげな顔で言う。『実はロブスター、小さいのよ。足りなさそうな人はメインを2つオーダーする事をお勧めするわ。』この方ホント正直。愛してる。大食らいのクマはロブスターの他に肉料理を頼んだようだ。皿の上に哀れなザリガニが乗っているのを想像した私とウニは、ロブスターの他に、ステーキを1皿頼んで2人でシェアする事に決めた。

モッツァレラチーズが厚さ1cmありやがります。前菜って量じゃない。

これがロブスターさんである。

小さいの?と隣のウォーリーに聞いた。

『小さいよ。でかいのは尻尾だけでこの皿ぐらいになる。ロブスターレストランに行くと、生きてるロブスターが水槽にいて、好きなヤツを選ばせてくれるんだ。それをその場で茹でてもらえる。その時に殻から湯気が出てキーキーと音を立てるんだ。ちょっとゾッとするね。抗議する団体もいるぜ』

確かにラピュタでドーラさんが豪快に食ってた海老(?)を想像したら小さいが、みっちり肉が詰まってるし、2匹分の尻尾が乗っている。普通にお腹いっぱいになるよねこれ?とウニと顔を見合わせる。ステーキは根性で平らげた。

ちょうどRoyal Caribbean50周年と言う事で、各テーブルに1つずつ配られたケーキ。色がアメリカだね!脳天が破壊されるほど甘かったよ!

今晩が最後の寄港地で後は帰るだけと言う事で、ディナーの途中でバンドの演奏が始まったり、それに合わせてウエイターがナプキン振り回しながらぐるぐる歩き回ったりよく分からん余興があって、もう一晩ここで飯を食うって言うのにテーブルのみんなで記念写真撮ろうって話になって、何か既におセンチメンタルなムード。やめてくれい、まだ丸一日あるじゃないか。


その夜は屋上のプールでダンスパーティーがあると聞いていたから行ってみたら、強風で中止になっていた。ジャグジーでスープやっている連中がいたので冷やかしに行ったら、スープ王に腕を掴まれて引き摺り込まれそうになった。『みんな全員えんらいさんじゃないかー!覚醒させられるのは嫌だー!抵抗してやるー!抵抗してやるー!』『あらやだ、私レジスタンスよ』『何してんだー!XM減るぞー!』


危うくスープの具にされそうになり、やれやれと思いつつビールを手に歩いていたら、プールサイドのテーブルでウォーリーが1人で煙草を吸っていたので自分も座っていいか訪ねた。もちろんさ、ウォーリーがジェスチャーをする。このクルーズは良かったなぁ、楽しかった。そんな話から、お互いの仕事の話や気候の話になった。日本で竜巻が起こって車がひっくり返った話をしたら、マジモノの竜巻はすげぇぞ、とウォーリーは言った。スーパーマーケットが丸々吹き飛ばされて無くなっちまう。竜巻が来たら出来る事は、とにかく家の奥の奥、一番奥に隠れるこった。ウォーリーはある引越し先でIngressをやらなくなった理由を話した。シャブ中毒のAGカップルが24時間眠らずブッ通しで焼くもんだからバカバカしくなったと。アメリカのスラムじゃ市販薬を使っておうちでメタンフェタミンを合成するヤツがいる。


ツアーやミッションで駆け回っていたけど、こうやって腰を下ろして色々な人とゆっくりお話する機会をもっと持っても良かったな、と今更ながらに思った。

ダンスパーティーがキャンセルになった分、5階でやっていた70'sナイトでお爺ちゃんお婆ちゃん達に紛れて踊った。ゴツいカメラを抱えたカメラクルーがいるのだけど、撮った映像が30分遅れぐらいで船室のテレビで流れる。誰得なのかはよく分からない。自分が踊っているのがガッツリ映ってて、ウニクマルームで飲みながら観てゲラゲラ笑った。


明日は1日、船で過ごす。

予定はMDASのチェックアウトと写真撮影、フォーマルナイト。それだけ。

さっきウロウロしてた時に船の中のショップをちょっと覗いてみたけど、全然高くなかった。寧ろ、港の一部のお土産店の方がボッてるぐらい。明日また見てみよう。

部屋に戻ると6日目の案内パンフレットと、チップの為の封筒がベッドの上に乗せられていた。キャッシュレスなこの船では、チップは毎日クレジットカードから一定額が強制徴収(!)される。その上で、気に入ったスタッフには更にチップ頂戴、って話なんだろう。ルームサービスの人と、後は正直すぎるウエイターのルラマさんにチップを渡そう。TGで誰かが言っていたけど、強制徴収方式だから、労働者にきちんとチップが配られているか分かったもんじゃない、積極的にチップは弾むべきだと。


旅の途中ずっとそれはそこにあって、引っかかってはいた。あまりにもあからさまな階級社会。

船の中の客はほぼ全員が白人。労働者はほぼ全員が黒人かヒスパニック系。

1人で飲んでいた時『ちょっと席いいかしら?』と言ってきた、金ピカのIDカードを下げたマダム集団の1人から送られた、侮蔑の視線。


時間があると、人間は色々な事を考える。

それは良い事であり、時に悪い事でもある。


寝よう。今日も楽しい日だった。



写真:@CrystaTech @uni8

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